「介護」という単語を聞くと、直感的に年配者に必要なもの と感じてしまう。しかし、介護は「みんな」を支えるものだ と小林さんは話す。詳しく話を伺った。
取材:コンパス編集長
コンパス第40号 特別記念特集

年配者の暮らしを支えることは若者の夢を支えること。
介護は、「みんな」の支えです。
株式会社 想礼優
代表取締役社長 小林 匡善
令和5年12月、組合立鉢盛中学校の生徒たちが、デイサービスセンター・サファイアに寄付金を贈呈した。同中学校の生徒と地域の方々が、アルミ缶やペットボトルを回収して得た収益金だ。
寄付を受け取った小林さんは、こうした取り組みに改めて感謝の気持ちを伝えたいと話し、また、より多くの方と介護について考えたいと言う。

鉢盛中の皆さん、地域の皆さん、
ありがとうございます
「寄付金はデイサービスに通所する方のためのイベントや、一部必要な備品の購入などのために、ありがたく使わせて頂きました。改めて鉢盛中学校の生徒の皆さん及び、協力いただいた地域の皆様に深く感謝いたします。
〈人生100年時代〉を迎えて、こうした取り組みは、中学生の時代から地域の福祉に関心を持つ素晴らしい経験だと思います。また、誰かのために自分ができることを実践されていて深く感動しました」
そう話す小林さんは、寄付を受け取る際、お礼を兼ねて短い講演を行っている。その時のテーマも〈人生100年時代〉。
言葉の端々に〈人生100年時代〉というフレーズが出てくるが、何か特別な想いがあるのだろうか。
長寿の裏側にある課題
厚生労働省のホームページには、次のような文章が掲載されている。
〈ある海外の研究では、2007年以降、日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。〉
107歳といえば、今の平均寿命より20年長い。私にはとても喜ばしい話に聞こえるが、小林さんの表情は明るくない。
「100歳まで生きられるのと、100歳まで生きなければならないのは違う。私の施設には 歳まで自転車に乗って畑仕事をしていた人もいれば、40代で介護が必要になった人もいました」
寿命が延びれば延びるほど、介護が必要になる可能性は高まる。では、今の日本の現状はどうだろうか。
介護職員が足らない
厚生労働省は、令和7年度には約32万人、その5年後には約69万人の介護職員が不足すると試算する。だとしたら、どれだけ多くのお年寄りが困ることだろう。これはまさに大問題だ。
しかし、問題はそれだけではないそうだ。
「介護職員が不足すると、お年寄りが困ることは誰もが想像できます。しかし、介護職員が不足すると、若者も色々と困ります」
なぜ若者が困るのだろう。
誰がための介護
「問題は、ヤングケアラーです」
ヤングケアラーとは、家族を介護する若者を意味する言葉だ。総務省の平成 年の調査では約 万人がヤングケアラーであり、その数は年々増加傾向にあると言う。
「実は、私も私の弟も、ヤングケアラーでした」
小林さんは小学校低学年の頃から、弟と妹のおむつを替えたり、夕飯を作っていたそうだ。
小林さんの弟も、若い頃は首都圏で美容師を目指していたが、父が倒れ、父の介護をするために、夢を諦めて地元に戻ってきたと言う。
「介護者は負担が大きいが、若者となると特に、その傾向が強くなります。私の知り合いには、父親の介護が原因となり、結婚を諦めた女性もいます」
人によっては、働き方が制限されたり、夢や可能性が閉ざされることもあるだろう。
「介護という仕事は、お年寄りのためだけにあるのではありません。若者のための仕事でもあります。私たちはお年寄りの暮らしを支えることで、若者の力にもなりたい。そう思って毎日働いています」
介護という仕事が
もっと人気の仕事になりますように
「介護という仕事は、これからの社会に欠かせない職種です。しかし今、介護は決して人気の高い職業とは言えません」
そう残念がる小林さんだが、それでも、と語彙を強める。
「今、政府だけでなく、様々な企業が人生100年時代に向け考え始めています。介護が必要な人も、元気な人も、若い人も、高齢者も、誰もが安心して生活できる社会を作ること。そのために、各々が各々の立場にて、やるべきことを始めています。私たちも考えています」
聞けば、今回のコンパスの特集〈地域と向き合う〉の取材に応じたのも、その取り組みの一つらしい。地域の方に、介護業界を知ってもらうこと。まずはそこから。そう考えてのことだと言う。
小林さんが鉢盛中学校にて行った講演の原稿は、こう締めくくられていた。
「誰かのため。そういう気持ちが人一倍強いから、高齢者だけでなく、若者や地域社会のためを想う。そういう人が、介護の仕事を選ぶんだよ。そして、そういう人が増ええたらいいな。そういう社会になったらいいな。それが、私の正直な気持ちです」
人生100年時代。大事な仕事は沢山ある。しかし、介護も大事な仕事だ。もっと人気の職業になりますように。もっと担い手が増えますように。私も切にそう願う。
きっと今の子供達に、 歳まで生きる、と言ってもピンと来ないだろう。だからこそ、大人が一人ひとり考えるべきだ。
どうすれば、100歳まで安心して生きれる社会ができあがるか。
世界で最も長寿の国・日本。さらに、私たちが暮らすのは長寿の長野県。他人事ではない。
